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Vol.4 だれもが「⼈間らしく働く」ためには?Vol.4 だれもが「⼈間らしく働く」ためには?

2021.10.29

「働きがいのある人間らしい仕事」とは?

SDGs部のBさんが、テストの解答用紙を見て落ち込んでいるみたい。

はぁ……また数学のテストでひどい点数取っちゃった。研究者になる夢が遠のく一方だな。

Bさんの夢って研究者なんだね! うちのお兄ちゃん、最近暇してるから、家庭教師してもらったら?

お兄さん、アルバイトで忙しいんじゃなかったの?

飲食店でアルバイトをしてるんだけど、コロナ禍では時短営業で、なかなかシフトに入れてもらえないみたいなんだ。

飲食店はどこも厳しい状況だよね。2020年の飲食店の倒産件数は過去最多だったらしいよ。

飲食店に限らず、解雇されたり雇い止め(契約期間の更新をしないこと)にあったりした人も増えたみたいだね。若い人は特に多いみたい。

世界的に見ると、コロナ禍以前から若者の失業率は問題になっているんだよ。2019年の時点で、世界の15~24歳の失業率は13.6%。北米では9%を下回っているけれど、北アフリカでは30%に達していて、地域差も大きいんだ。※1

みんなが暮らしに困らないようにするためには、仕事をしたい人がきちんと仕事を得られる社会でないとね。

うん、でも仕事があればいいというわけでもない。世界で働いている若者のうち、13%は国際貧困ラインの「極度の貧困」に該当する1日1.9ドル(約210円)未満の所得で暮らしているんだ。※2新型コロナウイルスの世界的な大流行によって、この状況はさらに悪化しそうだね。

児童労働も問題視されているよね。学校に行ったり遊んだりできずに、働かないといけないなんて……。

そうだね。児童労働に従事している子どもは世界で1億6000万人もいて、その数は世界の子どもたちのおよそ10%に当たるんだ。※3

教育を受けられないまま大人になると、成長しても低収入の仕事しか得られないことが多いし、子どもの頃から過酷な肉体労働をしていたせいで健康を損なって、働き続けることができなくなる人もいると聞いたよ。

危険な業務や不衛生な環境での労働を強いられている人は年齢を問わずたくさんいて、仕事に関わる事故や病気で命を落とす人は世界で毎年278万人もいるんだ。※4

そんな仕事、いくら生活のためとはいえ、続けられないよね。

そこで、世界中で「ディーセント・ワーク(Decent Work)」の推進が求められているんだけど、この言葉を聞いたことがあるかな? 1999年に、国際労働機関(ILO)のファン・ソマビア元事務局長が提唱した考え方で、日本語では「働きがいのある人間らしい仕事」と訳される。人としての権利や十分な収入を保障され、社会保障や対話、自由や平等が確保されて、安心して安定的に働ける労働環境ってことなんだけど、具体的に言うと、どんな仕事だと思う?

う~ん、仕事に見合ったお金がちゃんともらえて、安全で、パワハラやセクハラをされることもなく安心して働ける仕事かな。

ちゃんと休みが取れることも大事だと思う。シフトや働く場所の相談もできないと困るよね。勝手な理由で突然解雇されることがないことも重要だな。

そうだね。当たり前に聞こえるかもしれないけれど、実現できていない職場は多いんだよ。

※1 ILO 『世界の雇用情勢―若者編』
https://www.ilo.org/tokyo/information/pr/WCMS_738044/lang--ja/index.htm

※2 世界銀行 国際貧困ラインの改定について
https://www.worldbank.org/ja/country/japan/brief/global-poverty-line-faq

※3  ILO 最新報告書『児童労働:2020年の世界推計、動向、前途 』5つのポイント
https://www.ilo.org/tokyo/areas-of-work/child-labour/WCMS_802422/lang--ja/index.htm

※4 ILO 「仕事の未来の中心にある安全と健康」
https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---asia/---ro-bangkok/---ilo-tokyo/documents/publication/wcms_712511.pdf

*児童労働:国際労働基準条約の第138号の定義では、15歳未満(途上国は14歳未満)の義務教育を受けるべき年齢の子どもが教育を受けずにおとなと同じように働くこと、また18歳未満の危険で有害な労働。

課題が山積み、日本の労働環境

日本では長時間労働も問題になっているよね。うちのお父さんも毎日、夜中まで仕事してるよ。

日本は諸外国に比べて平均労働時間が長くて、6割以上の人が週40時間という法定労働時間を超えて働いているんだ。※1ひと月に換算すると、国が定める過労死ライン(月80時間の時間外労働)を大幅に超えて、週60時間以上働いている人も6.4%いる。

働き過ぎて病気になったり、心のバランスを崩したりしてしまう人もいるよね。

自殺の約1割は勤務上の問題が理由だといわれていて、その割合は増加傾向にあるんだ。※2仕事でのストレスが増えているんだね。前回話題になった、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲット3.4に関する課題は、労働問題とも深い関わりがあるんだ。

さっき先生が「ディーセント・ワーク」には“平等”も含まれるって言ってたけど、日本では男女の差がまだまだ大きい気がする。出産や子育て、親の介護が大変で、キャリアアップを諦める人も多いって聞くよ。

確かに、そういったことを理由に仕事を辞めたり、時短勤務を選んだり、転勤や異動や昇進を断って出世のチャンスを逃してしまう女性はまだまだたくさんいるね。2016年に「女性活躍推進法」が施行されて以来、女性管理職の割合は増えているけど、2018年の時点では14.9%※3にとどまっていて、G7(主要先進7カ国)で最下位だったんだ。世界の平均は27.1%※4だから、だいぶ開きがあるね。

「家のことは女性がやる」というイメージや「男性は家庭より仕事を優先すべき」という考えが日本の社会に根強くあるのかもしれない。だから、本人の考えだけでなく、周囲の人の理解が得にくい雰囲気もあって、男性が家事や子育てに参加しにくいことも原因の1つかも。

私は将来子どもが欲しいけど、仕事もバリバリこなして出世したいな。女性だからって、どっちかを諦めなきゃいけないなんて、おかしいよ。

そうだよね。男女の役割分担に対する意識は変えていくべきだし、長時間労働を改めないと、結局夫婦のどちらかに育児や介護を押し付けることになる。保育園や学童保育も増やす必要があるし、企業は時短勤務や育児休暇を男性も積極的に利用しやすい雰囲気を作っていくことが大切だね。

女性はパートやアルバイト、契約社員や派遣社員として働いている人も多いから、コロナ禍ですごく影響を受けているみたい。

正社員ではない非正規雇用者は、自由な働き方ができる反面、不安定だよね。お兄ちゃんも「いつクビになるかわからない」って落ち込んでたよ。

正社員に比べてお給料が低いし、健康保険や厚生年金に入れてもらえないこともあるんだって。

2018年の調査では、正社員の平均年収が504万円なのに対し、労働者全体の37.8%を占める非正規雇用者の平均年収は179万円で、325万円も差があったんだ。※5※6とくにひとり親の家庭では苦しい生活を強いられることが多いし、結婚や子どもを持つことに不安を感じている若い人も多いんだよ。

女性や非正規雇用者の働く環境を変えていかないと、少子化も進む一方だね。

※1 厚生労働省「我が国における時間外労働の現状」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000136357.pdf

※2 厚生労働省「令和2年版過労死等防止対策白書」
https://www.mhlw.go.jp/content/000689329.pdf

※3 内閣府男女共同参画局「就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-14.html

※4 ILO 『A quantum leap for gender equality: For a better future of work for all(男女平等に向けて大跳躍:より良い仕事の未来を全ての人に)』
https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---dgreports/---dcomm/---publ/documents/publication/wcms_674831.pdf

※5 総務省統計局「労働力調査」2018
https://www.stat.go.jp/data/roudou/rireki/nen/dt/pdf/2018.pdf

※6 国税庁 平成30年分民間給与実態統計調査結果について
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/minkan/index.htm

SDGsの目標8と私たちにできること

SDGsでは目標8に「働きがいも経済成長も」というゴールを設定しているんだ。ディーセント・ワークを実現するために、これから社会を担っていくみんなができることって何だろうね?

  • 8 働きがいも経済成長も
  • SDGsの目標 8

    すべての人々にとって、持続的で
    だれも排除しない持続可能な経済成長、
    完全かつ生産的な雇用、働きがいのある
    人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を促進する

ターゲット

8.1
各国の状況に応じて、一人あたりの経済成長率を持続させ、特に後発開発途上国では少なくとも年率7%のGDP成長率を保つ。
8.2
高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化や技術向上、イノベーションを通じて、より高いレベルの経済生産性を達成する。
8.3
生産的な活動、働きがいのある人間らしい職の創出、起業家精神、創造性やイノベーションを支援する開発重視型の政策を推進し、金融サービスの利用などを通じて中小零細企業の設立や成長を促す。
8.4
2030年までに、消費と生産における世界の資源効率を着実に改善し、先進国主導のもと、「持続可能な消費と生産に関する10カ年計画枠組み」に従って、経済成長が環境悪化につながらないようにする。
8.5
2030年までに、若者や障害者を含むすべての女性と男性にとって、完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を実現し、同一労働同一賃金を達成する。
8.6
2020年までに、就労、就学、職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。
8.7
強制労働を完全になくし、現代的奴隷制と人身売買を終わらせ、子ども兵士の募集・使用を含めた、最悪な形態の児童労働を確実に禁止・撤廃するための効果的な措置をただちに実施し、2025年までにあらゆる形態の児童労働をなくす。
8.8
移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある人々を含め、すべての労働者を対象に、労働基本権を保護し安全・安心な労働環境を促進する。
8.9
2030年までに、雇用創出や各地の文化振興・産品販促につながる、持続可能な観光業を推進する政策を立案・実施する。
8.10
すべての人々が銀行取引、保険、金融サービスを利用できるようにするため、国内の金融機関の能力を強化する。
8.a
「後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)」などを通じて、開発途上国、特に後発開発途上国に対する「貿易のための援助(AfT)」を拡大する。
8.b
2020年までに、若者の雇用のために世界規模の戦略を展開・運用可能にし、国際労働機関(ILO)の「仕事に関する世界協定」を実施する。

https://xsdg.jp/pdf/SDGs169TARGETS_ver1.2.pdfをもとに作成

一人ひとりがすぐにできるのは、「家事や育児は女性の仕事」「男性は家庭より仕事を優先すべき」っていう固定観念を変えていくことかな。

そうだね。SDGsでは目標5「ジェンダー平等を実現しよう」でもそうした固定観念を変えていくことを目指しているよ。目標5の内容については、別の機会に詳しく紹介するね。

私たちも家族というチームの一員である自覚を持ってもっと家事を手伝えば、お母さんやお父さんの負担を軽くできるかもしれないね。

労働環境を変えるには、社会全体で国に働きかけていくことも必要だよね。18歳になって選挙権を持ったら、共感できる雇用対策を掲げている政党や候補者に投票することがその一歩になるのかも。

うん、ディーセント・ワークの実現には、一人ひとりが意識を変えていくのと同時に、みんなで声を挙げて国や企業を動かしていくことも必要だね。君たちが将来の職業を選ぶとき、仕事の内容はもちろんだけど、労働環境も大事な判断材料になると思う。どんな働き方をするかは、どう生きるかを選ぶことでもあるからね。

私はバリバリ働きながら、家族と過ごす時間も大切にしたいな。

僕はなるべく早く仕事を終わらせて、趣味に思いきり打ち込みたいかなあ。

いいね。人の役に立ちたい、定年に関係なくずっと働き続けたい、どんどんスキルアップしてその仕事でのトップを目指したい、趣味や地域活動、ボランティアにも時間を使いたい……いろんな考えの人がいると思う。自分が人生で何を大切にしたいのか、それを実現するためには自分や社会がどうあるべきなのか、考えることがとても大事だと思うよ。

発見! SDGsチャレンジャー だれもが働きやすい社会を目指して 「レインボーウィーク」の実施を企業に提案 関西学院千里国際高等部 大川澄蓮さん、加藤柚香さん、福田綾さん

日本では3~10%の人が該当するといわれる※1 性的マイノリティ、LGBTQ
東京2020オリンピックではLGBTQであることを公表するアスリートが過去最多となるなど、欧米を中心に性の多様性に対する社会の理解は進みつつある一方、日本ではLGBTQに対する偏見や差別が根強く残っているのも事実です。

関西学院千里国際高等部の大川澄蓮さん、加藤柚香さん、福田綾さんは、学生の間でも「ゲイ」などの呼称がからかい目的で使われている様子を目にしたことをきっかけに、強い問題意識を抱きました。LGBTQの半数以上がいじめを受けた経験があるという統計にもショックを受けたと話します。

全国高校生SDGs選手権2020に参加した3人は、こうした問題意識から「誰もがチャレンジできる社会」「ハンデを持つ人が共生できる社会」をテーマに掲げ、協賛企業である株式会社ダイレクトマーケティングミックスと共に、性の多様性の尊重を啓発する「レインボーウィーク」の実施を企画。障がい者用トイレの表示を変え、性別や障害の有無に関わらず使えるようにした「だれでもトイレ」の設置や、外見による偏見をなくし多様性を認め合うために自由な服装で出勤する「自分らしさDay」、多様性の象徴であるレインボーカラーのアイテムを身に着けて写真を撮り、社内外でシェアする「広がるレインボー」などの取り組みを、「虹」とかけて2月4日~10日の1週間に実施することを提案しました。
これらの取り組みは、性の多様性だけではなく社員一人ひとりの個性を尊重し、LGBTQ当事者に限らず、だれもが自分らしく働くことができる環境づくりにつながります。その結果、人材を最大限に活かすことができ、従業員満足度が上がることで仕事の質の向上にもつながるなど、企業にもさまざまなメリット(経済的効果)があるといいます。

「私たちも将来は自由で多様性が認められた環境で働きたい。多くの企業にこの取り組みを広げていきたいです」と話す3人は、これからも未来を変えるためのアクションを続けていきます。

※1 東京レインボープライド2021調べ
https://tokyorainbowpride.com/lgbt/

*LGBTQ…Lesbian(レズビアン:女性同性愛者)、Gay(ゲイ:男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシャル:両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー:身体的性別と性自認が一致しない人)、Queer/Questioning(クイア、クエスチョニング:自分自身のセクシュアリティを決められない・分からない・決めない人)の頭文字をとった言葉で、性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称のひとつ。

準備中♪

大会に向けてプレゼンテーションの準備をする大川澄蓮さん、加藤柚香さん、福田綾さん。

オンラインで開催された全国高校生SDGs選手権2020当日の様子。ポップな着ぐるみ姿で交代しながら画面に登場し、プレゼンテーションの演出にも工夫をこらしました。

SDGs目標8 「働きがいも経済成長も」に関する大日本住友製薬の取り組み 社員のワークライフバランス向上を目指し、情報共有を通して「働き方改革」を推進

  • 大日本住友製薬では「働き方改革」の基本的なコンセプトを、従業員が充実感をもって働くことができ、成果を上げられるよう、従業員と会社で「Win-Win(双方が満足でき利益を得られること)」の関係をつくっていくこととして、一人ひとりが限られた時間の中で自分の役割を果たし、成果を上げることを目指しています。
    「働き方改革」が始まった2017年以降、各職場で従業員同士が働き方の見直しなどについて話し合うミーティングを定期的に開催しているほか、社内のイントラネットに「働き方改革サイト」を設置し、役員のメッセージや、各部門の目標、取り組み事例の共有などを行うことで、働き方改革の取り組みの活性化につなげています。
    特に2020年度には、業務効率アップのための工夫、ストレス解消方法、グループでの情報共有方法など、日々当たり前に行っていることを「在宅勤務のちょっとした工夫」として、共有しました。また、テレワーク中でも上司、部下、同僚と円滑にコミュニケーションを図ることができるような環境づくりも実践しました。

  • 従業員の「在宅勤務でのちょっとした工夫」の共有事例

    業務中に使用するものをBOXにまとめ、BOXの出し入れでオンオフを切り替える。

    業務効率UPのため、スタンディングデスクを自作で準備。

テレワーク環境下で実践できる
マネジメントの工夫を紹介。

また、従業員は仕事(ワーク)と生活(ライフ)のどちらにおいても役割を果たし、充実感を得られることが大切だと考えています。限られた時間の中で最大の成果を出し、仕事が終わった後や休日には、趣味や家族との団らん、また自分自身のスキルアップに時間をかけるなど、仕事をしている時間の”質”を高める意識が、個人の成長を促し、結果として会社の成果につながるといった良い循環が生まれることを期待しています。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い実施する機会が増えた在宅勤務で、曖昧になりがちなワークとライフのメリハリを付け、楽しく仕事をして成果を上げ、生産性が向上するよう、働き方改革をさらに進化させた取り組みを続けていきます。

監修:蟹江憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)