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細胞医薬品、本格化への道

病気やケガでからだの一部やその機能が失われてしまう難病に苦しむ人たちを救う希望の光となる「再生医療」が、現実のものになりつつあります。再生医療とは、培養した細胞を患部に移植し、正常な働きをするようによみがえらせる治療法です。もう動くことはないと思われていた手足が動く、失明した眼に視力が戻るなど、従来の治療法では実現できなかった根本的な治療を可能にします。治療に用いる細胞のことを、「細胞医薬品」と呼びます。

細胞医薬品、どこまで進んでる?

4コマ

再生医療を飛躍的に進歩させた
iPS細胞

再生医療分野の研究開発は1980年代から世界各国でさかんに行われるようになり、大日本住友製薬もそのころから力を入れて取り組んできました。そして2006年、京都大学の山中伸弥教授らによる「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」の発明が、再生医療が飛躍的に進歩するきっかけになりました(iPS細胞について詳しくは、くすりの挑戦 iPS細胞でつくる、薬の未来を参考にしてください)。研究は急ピッチで進み、2018年には京都大学医学部附属病院が京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と連携し、iPS細胞から作った細胞医薬品の実用化に向けての医師主導臨床試験(治験)をスタートさせました。

iPS細胞を用いた再生医療実現までの道のり

手間も時間もかかる細胞医薬品

iPS細胞は、さまざまな細胞に変化する能力を持っています。iPS細胞をもとにして、脳に移植するための細胞、眼に移植するための細胞など目的の細胞に変えていくのですが、その作業は赤ちゃんのお世話に似ているところがあります。きれいな環境で細胞にとって心地よい温度を保ち、栄養分などを含む培地は毎日取り換えなくてはなりません。常に目が離せないあたり、まさに赤ちゃんのお世話と一緒です。

また、どれだけ細胞の培養条件を均一に制御したとしても、すべてが目的の細胞になるわけではなく、一定の割合で目的の細胞にならないものが残るため、それらを取り除く作業も必要になってきます。このような作業を経てやっと完成する細胞医薬品ですから時間もかかります。細胞医薬品を作るには通常数カ月かかります。

細胞医薬品、どこまで進んでる? 生まれたばかりの赤ちゃんが入る保育器に似ているかも

実用化に欠かせない
「高品質・同質・大量生産」

iPS細胞から細胞医薬品を作る作業は、研究の段階では研究者がほぼ手作業で行っていました。「こうすればうまくいく」というのがだんだんわかってきて、いよいよ実用化という段階に近づいてきましたが、そのためにはどうしても乗り越えなくてはならない大きな壁がありました。それは、

  • ・ 高品質で同質のものを作らなくてはならない
  • ・ 大量に作らなくてはならない

というもの。

私たちが日ごろ使っている薬には「Aという成分が〇mg、Bという成分が△㎎」というように常に一定量の成分が入っているのと同じように、でき上がった細胞医薬品は性質が同じでなくてはなりません。完成まで数カ月の間、綿密な温度管理や細胞を汚染させる菌の混入がないようにするなど、品質を保つための工夫が不可欠です。治療を心待ちにしているたくさんの患者さんに役立つために大量に生産する必要があります。

世界初の専用施設が完成、
自動化がカギ

大日本住友製薬は、精神神経領域の薬の開発をリードし1990年代から中枢神経の再生研究に取り組んできたという強みを生かし、iPS細胞を用いた細胞医薬品の研究開発を進めています。

2013年に細胞医薬品に関する事業の専任部署を立ち上げ、そのときから「高品質・同質・大量生産」を実現するための課題を乗り越えるには専用の製造プラント(生産設備)が必要と考え準備を進めてきました。そして2018年3月、iPS細胞を使った細胞医薬品を作るための専用施設としては世界初となる「SMaRT」が完成しました。

再生・細胞医薬製造プラント「SMaRT」
(大阪府吹田市、大日本住友製薬研究所内)
SMaRT はSumitomo Dainippon Manufacturing Plant for Regenerative Medicine & Cell Therapyの略。2017年2月に着工し2018年3月に完成。延床面積は2,915㎡でテニスコート(ダブルス)10面分以上

SMaRTには、同質の細胞を自動化して大量に育てる装置、目的の細胞だけを速く正確に選び分ける装置を導入しました。現状では手作業で行う工程も多いですが、将来的に目指すのは全工程の自動化です。細胞医薬品の製品化に向け「この分野で世界をリードする」という使命感のもと、大日本住友製薬は挑戦し続けます。

再生・細胞医薬製造プラント
「SMaRT」をのぞいてみよう

培養を自動化する閉鎖型自動培養装置

ここには細胞を育てるための培養
プレートが10段入っている

これが培地。
培養プレートの培地は自動的に交換される

目的の細胞だけを採取する高速セルソーター

菌が入り込まない閉鎖的な空間で
目的の細胞だけを採取

  • 全身を覆う防護服を着て
    作業する人々

    空気を封じ込める構造の作業用ベンチ「安全キャビネット」
    作業する人、サポートする人、記録する人がチームで動く

  • 自動搬送装置

    製品を無菌の状態で移動する