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細胞医薬品が、医療を変える

医療の進歩によって多くの命が救えるようになりましたが、なかなか治らない病気もあれば、ケガで失われたからだの一部やその機能が、どうしてももと通りにはならないということも、たくさんあります。

そんな病気やケガを克服するための新たな薬として注目を集めているのが「細胞医薬品」です。細胞そのものを患部に移植し、正常な働きをする組織や臓器に「再生」させます。これが再生医療と呼ばれる治療法です。移植された細胞は、失われた細胞の代わりに働いたり、弱った細胞を元気にしたりすることで、傷ついた組織や臓器が、もと通りの機能をとり戻すように働きかけます。

スコッピィ:「治らない」を「治る」に変える!

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臓器移植が困難な部位がある

似たような治療法として、細胞の“塊”である臓器の一部や全部を入れ替える臓器移植を思い浮かべるかもしれません。心臓や肝臓、腎臓などの臓器移植は、多くの命を救ってきました。しかし、たくさんの神経細胞が複雑につながり合って機能する脳や脊髄、脳と神経でつながっていなければ視る力を失う眼の網膜のように、“とり替える”という方法では、うまく機能が回復しない部位が残されています。

特に脳や脊髄の「中枢神経」は、20世紀の終わりごろまで、一度ケガなどで切れたり壊れたりしたら、二度と再生しないと考えられてきました。実際に脳梗塞、脊髄損傷、パーキンソン病をはじめ、中枢神経が損傷される病気はなかなか治りません。

臓器移植が困難な部位がある

琴楓(ことか)ちゃん:iPS細胞なら論理的な問題もクリアできるのね

iPS細胞で進む細胞医薬品の研究

中枢神経が損傷を受ける病気やケガも、なんとか治せないものか……と研究が続く中、私たちのからだの中には、必要に応じていろいろな臓器の細胞に変わる力をもつ「幹細胞」という細胞があることが分かってきました。このことから、損傷を受けた中枢神経細胞であっても、幹細胞を使えば再生できるのではないかと研究が進みました。

まずは、もとから各臓器の中にあり、その臓器細胞になる「体性幹細胞」が発見され、その後、人の受精卵から、たくさん増やせて、どのような細胞にもなれる「胚性幹細胞(ES細胞)」が作られ、研究に利用されました。しかしES細胞は命のもとである受精卵を壊して作るところに問題(倫理的な問題)がありました。

細胞医薬品の開発において、大きな転機となったのは「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」の発明と言えるでしょう。ES細胞のように増やせて、さまざまな組織や臓器を作ることができます。しかもiPS細胞は、皮膚などの細胞から作るので、倫理的な問題がありません。iPS細胞の登場により、細胞医薬品の研究は格段に進みました。iPS細胞については、くすりの挑戦 iPS細胞でつくる、薬の未来も参考にしてください。

下の表に、細胞医薬品の原料としての開発が進められているこれら幹細胞の特徴をまとめます。

琴楓(ことか)ちゃん:iPS細胞なら倫理的な問題もクリアできるのね

細胞医薬品の原料となる幹細胞の特徴

細胞医薬品の働き方は2タイプ

細胞医薬品は、からだに移植したあと、薬として働く仕組みにより2つのタイプに分けられます。まず、移植した細胞が出すたんぱく質などの因子が機能回復やからだの再生に役立つタイプ。もう1つは移植した細胞がそのまま生着し、失われた細胞や組織に代わって機能するタイプ。移植治療というとこちらのタイプをイメージする人が多いと思います。

スコッピィ:「因子放出タイプ」と「そのまま生着タイプ」だね

iPS細胞が薬になる日は近い

皆さんは、細胞医薬品が実現するのはまだまだ遠い将来なのでは?と感じているもしれません。しかし、大日本住友製薬では、これまで説明したように、他の企業や研究機関と連携し、一部はすでに患者さんを対象とする試験を進めていたり、その他もできるだけ早くヒトでの臨床試験を開始できるよう研究開発を急いでいます。

今まで薬がなかった病気やケガに苦しむ患者さんに、細胞医薬品を使った全く新しい治療法を届けることができる日は、そう遠くないはずです。

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コラム

細胞医薬品の自家移植と他家移植

2014年9月、理化学研究所などのチームは、加齢黄斑変性の患者さんの細胞から作ったiPS細胞をもとに、シート状の網膜色素上皮細胞を作って、その患者さん本人に移植するという手術を世界で初めて行いました。この方法は、患者さん自身の細胞から作った細胞を移植するので「自家移植」と呼びます。

細胞医薬品の実用化に向けた貴重な一歩となりましたが、自家移植というのは“オーダーメード”の治療法なので、時間も費用もかかります。多くの患者さんに使えるようにするには、従来の医薬品同様、必要なときに必要なだけ使えるようにしておかなくてはなりません。

健康なヒトの細胞から作ったiPS細胞をもとにした細胞を使うのは「他家移植」です。あらかじめ、このiPS細胞を凍らせて保存しておけば、いつでも必要なときにとかして培養し、目的の細胞に育て始めることができます。安全のための検査も十分にできますし、いつも同じ細胞を原料に使うので費用も安く済みます。大日本住友製薬が現在開発中の細胞医薬品は、いずれも他家移植のためのものです。

自家移植と他家移植については、くすりの挑戦 iPS細胞でつくる、薬の未来も参考にしてください。

多くの患者さんに使える「他家移植」のための細胞医薬品を開発中です