大日本住友製薬 統合報告書 2019
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陣が最も力を注いだテーマが人心の融合・融和でした。兵庫 それぞれの社員が異なる方向を向いていたのでは良いスタートを切れませんからね。私もかつて所属する銀行で大きな合併を経験し、別々の歴史を歩んできた企業組織が一つになる難しさを痛感しました。多田 そのため、外部のコンサルタント会社の協力も得て合併後の組織運営の成功例や失敗例の研究も行いました。2、3年かかることも覚悟して融和を図ってきたのですが、予想以上に順調に進みました。その結果、まじめで誠実、相手を尊重し、信頼を大切にするという、合併前から両社が持っていた好ましい要素が一層際立った素晴らしい企業文化を醸成できたと自負しています。ただし、その一方で、合併時の基本戦略に掲げていた、環境変化をいち早く捉えて新しいことに積極的にチャレンジしていく「挑戦的企業文化の醸成」については、あまり進んでいないのが実情です。私は社長時代からずっと、この挑戦する文化を根付かせるためにさまざまな施策を打ってきましたが、まだ不十分であるという認識です。兵庫 一般的に、企業規模が大きくなると従業員の安定志向が強まるものですが、製薬企業が持続的に成長していくには、イノベーションを起こして新規性の高い差別化された医薬品を提供し続ける必要があります。そのためには常にチャレンジしなければならないし、リスクも取らなければなりません。そのようなイノベーションを牽引する力が組織の中に十分あるかといえば、まだまだ不十分というお考えですね。多田 はい。社長就任時、それが最大の課題と考え、以前にも「Change for Challenge!」「Seek Something New!」というスローガンを掲げてきましたし、今回の「中期経営計画2022」でも「ちゃんとやりきる力」の浸透、「変革を加速する企業文化の醸成・人材育成」を重要戦略に位置付けています。兵庫 その「挑戦する文化」を定着させるためには、どのような施策が必要だとお考えですか。多田 まず第1に求められるのは経営者、すなわちリーダーのコミットです。私自身これまで海外の展開、新領域への進出等についてコミットしてきたつもりですし、これからも他の経営積極的なローテーションと選抜型研修で成果を最大化できるプロの組織をつくる。兵庫 続いて人事制度についてうかがいます。御社の場合、部長職クラスの人材がいろいろな部署を歴任するなど、陣と共に内外に強く宣言していく方針です。2つ目が、現場の認識です。現場の責任者が挑戦することの意味や重要性を十分理解して、社員一人ひとりの挑戦をサポートしていく必要があります。3つ目が挑戦を促す人事システムの整備です。数字には表れにくい社員の挑戦する姿勢をきちんと把握し、どのように評価し、インセンティブを付与していくかが重要です。そして4つ目の要素が人材の多様性であり、ユニークな発想や特別な能力を持った異能の人材を起用していくことです。例えば、組織内にデジタル革新を起こしたいのなら、我々のようなアナログ世代が背伸びして旗を振るよりも、我々が思いもつかないような発想ができる人材を起用すべきです。これら4つを組み合わせながら挑戦する文化を根付かせていこうと考えています。兵庫 米国のセプラコール社(現サノビオン社)や、海外のベンチャー企業を買収したことも、少なからず企業文化に影響したのではないですか。多田 おっしゃる通り、2009年のサノビオン社の買収は、当社にとってグローバル化への大きな一歩となりました。当時の売上高に匹敵する2,500億円規模の大型買収でしたから、まず買収を決めたことが挑戦への意思表明であり、会社が大きく変わろうとしていることを社員も実感したはずです。海外の企業の価値観や考え方、働き方まで、人材の多様性が一種のダイナミズムになっていることを肌で感じました。さらに、その後、2012年のボストン・バイオメディカル社、2017年のトレロ社など、いくつかベンチャー企業を買収しましたが、彼らは挑戦しなければ生き残れない世界で闘ってきた人達です。企業文化を同一化する必要はありませんが、彼らのベンチャースピリットから学べるものを学んで、企業文化の変革につなげる努力をしています。大日本住友製薬株式会社 統合報告書201922

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