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くすりの仕事図鑑 製薬会社で働く人々 VOL.1 研究の仕事

研究の仕事・・・その前に

こんにちは!スコッピィだよ。みんながよく知っている薬ってどんなもの?テレビのコマーシャルで見かける、薬局やドラッグストアで売っている一般用医薬品(市販薬)なんじゃないかな?市販薬って約1万1000品目もあるんだ[※1]。すごいね。でも実は、病院やクリニックで使われたり、処方されたりする薬(医療用医薬品)のほうがもっと多くて、約1万7000品目もあるんだって[※2]。しかも、生産金額は市販薬の約8000億円に対して医療用医薬品は約6兆円[※3]。7倍以上も差があるんだよ。

大日本住友製薬は、医療用医薬品を専門につくっている会社だよ。新しい薬を生み出すための研究・開発はもちろん、できた薬が安全に正しく使われるように、みんなで協力しあって働いているんだって。

いろいろなタイプのくすり
「くすりの仕事図鑑」では、製薬会社の具体的な仕事内容について、医療用医薬品を専門につくる大日本住友製薬の事例を4回に分けて紹介するよ。まず第1回目は、「研究の仕事」から!
  • ※1 日本医薬情報センター編:
      JAPIC一般用医薬品集2017 丸善出版, 2016
  • ※2 厚生労働省:使用薬剤の薬価(薬価基準)の
      一部改正等について(平成29年8月29日)
  • ※3 厚生労働省:平成27年薬事工業生産動態統計年報の概要
スコッピィ
研究の仕事とは?

製薬会社で行われている研究の仕事を一言で表すなら、それは「薬の種探し」です。病気を引き起こす仕組みを調べ、どのような薬であれば病気に効くのか、薬の成分を、効かせたい場所までタイミングよく適切な量を届けるにはどうすればいいか、薬によって体に悪影響が出ることはないか……といったことを入念に調べます。薬の種を探し始めてから、ヒトを対象とする試験(臨床試験)に進める薬の種ができた!という段階になるまでが研究の仕事です。

薬の種探し
どんな仕事をするの?

研究の仕事について、まずは主な部門ごとに見ていきましょう。大きく分けると以下の5つがあります。

5つの研究部門
化学

薬の種の出発点となる成分(候補化合物)を探す、作り出す。

薬理

候補化合物がからだに与える影響を調べる。病気になる仕組みから候補化合物を絞り込む。

安全性

毒性や発がん性などの有害な作用はないか、からだの機能や遺伝子への影響はないかといった、安全性全般を調べる。

薬物動態

薬が体内に吸収される量やスピード、体内に広がって排泄されるまでの様子を調べる。

基盤技術

より短時間で候補化合物を評価する方法を作る。コンピュータで候補化合物を探す。薬の効き方や体内での様子の模擬実験(シミュレーション)を行う。ヒトと動物に共通した脳波や行動の変化を探り、薬の効き方を予測する。

「化学」と「薬理」の連携プレー

化学部門は、薬の“種の種”とも呼べる、候補化合物を作ります。薬はそもそも、自然界に存在する動物や植物、鉱物から「これは効きそう」という成分を見つけて作られたのが始まりですが、今ではそういうケースはまれです。薬の候補になりそうな化合物の情報を集めた「化合物ライブラリー」というものがあり、化合物の構造の一部を変えたり、化合物を組み合わせたりしていきます。

まはなちゃん:薬の種ってみつけるというより創り出すって感じなのね!

化学部門と、いわば車の両輪のように研究を進めるのが薬理部門です。候補化合物がからだに与える影響について、実験動物やヒトの細胞を使って検討します。逆に、病気になる仕組みを調べていくうちに「こういう化合物が効きそう」とわかってきたら、化学部門の人にそれを作ってもらうこともあります。

こうしたやり取りを繰り返し、よりよい候補化合物へと絞り込んでいきます。

臨床試験へのステップにかかわる研究

次は安全性の確認です。安全性の部門では、候補化合物に毒性や発がん性はないか、起こりうる副作用やその強さはどのくらいか、薬を使う本人やその子孫の健康状態にかかわる遺伝子への影響はないかなど、細胞や実験動物を用いた試験で確認します。

薬物動態の部門では、薬が体内に入ってから排泄されるまでの、薬の広がり方、広がるスピード、そして肝臓で薬の成分が分解される様子といった、からだの中での薬の動きをつぶさに調べます。薬の用量や投与間隔、投与方法などを決めるうえで重要な研究です。これらの試験をすべてクリアしたものが、臨床試験へと進みます。

スーパーコンピュータを活用

基盤技術の部門では、候補化合物探しから、からだの中で起こりうるさまざまな現象のシミュレーションまで、コンピュータを駆使した研究も行っています。つまり、上記4つの部門すべてにかかわる研究を行っています。

これこそ!という候補化合物を見つけるには膨大な量の計算が必要なので、計算機能の高いスーパーコンピュータを利用します(参考:くすりの挑戦 インシリコ創薬〜スーパーコンピュータ「京」の活用〜)。

担当の研究部門によって研究内容はさまざまですが、各研究員は目の前の課題に取り組み、連携し合い、薬の種を見つける研究に勤しんでいます。

スーパーコンピュータを活用
参考:(独)理化学研究所
プロフェッショナルインタビュー VOL.1 研究の仕事編 誰も知らないことを、世界で一番に知る喜びがある

—どうして製薬会社の研究者になったのですか。

きっかけは高校の化学の授業です。痛み止めの成分として有名なアスピリンは、とても単純な構造をしているのに、さまざまな痛みの症状を和らげると知り、「どうして薬は効くの?」と興味がわきました。大学は薬学部へと進み、脳の神経細胞の研究室に入りました。顕微鏡で見た神経細胞の形がとてもおもしろくて、これがどのようにして脳内の情報伝達を行っているのだろう、わからないことはまだまだたくさんあると実感。それを解明していく研究の仕事につきたい、できれば脳や神経、精神の病気の薬について研究したいと思うようになりました。幸いなことに今、この分野の薬理研究に従事しています。

—やりがいを感じることや、つらいことは。

自分が研究した薬の種が、新薬として使われて役に立ったと思える瞬間が、研究人生の中で1回でもあればラッキーというくらい、新薬を世に出すというのは簡単なことではなく、時間もかかります(参考:おくすりQ&A 新しい薬ができるまで)。私にはそんな瞬間が訪れないかもしれない、と弱気になることもあります。でも、世間に公表されていない薬の候補化合物の作用を、世界で一番に知ることができるというのが薬理研究のおもしろさの1つであり、やりがいを感じます。

年単位で研究を進めてきた候補化合物が、たとえば毒性が出て次のステップに進めないとわかったときは、残念に思います。でも、研究の過程で得られた情報やノウハウというのは次につながりますから、決して無駄ではありません。

—どういう人が薬の研究者に向いていますか。

まずは研究が好き、というのが第一条件でしょう。そして「誠実さ」が求められる仕事だと思います。たとえば予想に反するデータが出たとき、冷静な目で結果に向き合い、客観的に分析できるような人が向いています。

—薬の研究者になるには、薬学部に行った方がいいですか。

薬学部出身者は多いですが、理学部、工学部、農学部、獣医学部、医学部など、理系の他の学部を出た人も多数います。理系の大学院の修士課程、または医学部、獣医学部、薬学部などの6年制の学科までは進んだほうがいいでしょう。

—抱負や課題は。

中長期的な研究課題をクリアしていき、私が所属するリサーチディビジョン全体の研究の質の向上に貢献できるような研究の仕事を続けていきたいと思います。

1日のスケジュール

監修:亀井美和子 (日本大学薬学部教授)