HOME > すこやかコンパス > くすりのいろは > クスリはリスク Vol.1

HOME > すこやかコンパス > くすりのいろは > クスリはリスク Vol.1

クスリはリスク Vol.1 作用があれば副作用もある

クスリはリスク?

クスリはリスク? 元気なからだをとり戻すのを助けてくれる薬が“リスク”(=危険)ってどういうことなのでしょうか。

薬には本来の狙い通りの「作用」とともに、期待していない、望ましくない作用である「副作用」があります。副作用には、眠気や口の渇きといった比較的軽いものもあれば、最悪の場合、死に至るような重いものもあります。

「薬を使う」というのは、「副作用のリスクを背負う」ということ。まさに文字通り、薬(クスリ)とリスクは切り離せない、背中合わせの関係なのです。

望まない場所で効いてしまう

くすりのいろは 薬が作用する仕組み Vol.1 体内にある物質に“似せて”働くでも取り上げた通り、多くの薬は、もともとからだの中で起きている作用を強めたり弱めたりすることで、効果を発揮します。

たとえば、花粉症の症状として現れる鼻水や目のかゆみなどの原因の1つになっているのは、花粉の刺激によって増える「ヒスタミン」という体内物質です。だから症状を抑えるために、ヒスタミンの作用を弱める「抗ヒスタミン薬」を使います。

ヒスタミンが単に“花粉症を引き起こす悪いヤツ”であれば、これで問題解決! なわけですが、ヒスタミンは頭をスッキリと目覚めさせ、集中力を高めるために必要とされる体内物質でもあります。だからヒスタミンの作用を弱めてしまうと、眠気の副作用が出てしまうのです。

くすりのいろは 薬が作用する仕組み Vol.2 「発熱」と「痛み」を抑えるに登場した「解熱(げねつ)鎮痛薬」も同様です。発熱や痛みのもととなる「プロスタグランジン」という体内物質が作られるのを抑えることで熱を下げたり、痛みを和らげたりしますが、プロスタグランジンには胃粘膜の保護作用という役割もあります。だから解熱鎮痛薬をのむと、胃の調子が悪くなることがあるのです。

多くの薬の成分は、血液によって全身へと運ばれます。そのため、効かせたい場所で狙い通りに作用するのと同時に、望まない場所で望まない作用を引き起こすことがある……。それが薬のリスク、副作用なのです。

抗ヒスタミン薬と解熱鎮痛薬の作用と副作用

まはなちゃん:友達の薬をわけてもらうのは スコッピィ君:絶対にやめようね!

体質や体調、使い方の問題も

副作用は、使用する人の体質次第で強く出ることもあれば弱く出ることもあります。薬をあげたりもらったりしてはいけないのは、そのためです。あなたが使っている薬が友達にも合うとは限りませんから。また、あなた自身が以前に使ったことがある薬でも、「胃の調子が悪いときにのんだら副作用が出た」なんてことが起こり得ます。

そして当然ながら、薬は使い方を間違えると副作用が出る可能性が高くなります。多めにのめば、薬の血中濃度が効果を発揮する範囲を超えてしまい、副作用が出やすくなります(参考:くすりのいろは からだを旅する薬のこと Vol.2 からだに広がる薬の成分)。

薬と飲み物や食べ物、薬と薬……といった「のみ合わせ」によっても副作用が出る場合があるのは、前回までに学んだ通りです。

薬のリスク、副作用のことを知れば知るほど、薬を正しく使う大切さが理解できますね。

まはなちゃん:友達の薬をわけてもらうのは スコッピィ君:絶対にやめようね!

解説

薬の使用期限

薬には「使用期限」があるよ。薬の劣化につながる湿気や高温、直射日光を避けて涼しい場所で保存する……など、正しく保管した場合、未開封の状態で薬の品質や性状が保たれる期限のことなんだ。

使用期限を過ぎてしまった薬は、見た目には変化がなくても有効成分が分解していたり、副作用を起こしやすい物質に変化していたりするから使わないで!

1錠ずつなど個包装された薬なら使用期限まで使えるけれど、瓶入りの錠剤やカプセル剤、軟膏は開封した日から約半年、目薬は開封した日から約1カ月が使える期間と考えてね。もちろんこの期間内でも、見た目に異常があるようなら使わないで。液剤やシロップ剤は変質や細菌の繁殖が心配だから、「次に必要になったときのためにとっておこう」などとは考えず、残りは処分しよう。

病院で処方してもらう薬には使用期限が書いてないことが多いけれど、副作用を最小限に抑え、安全に有効性を発揮するのは、医師が指示した使用期間内だってこと、忘れないでね。

薬の使用期限

コラム

「薬」が「毒」に変わるとき

「薬も過ぎれば毒となる」ということわざがあります。適量なら薬として作用するけれど、とり過ぎはからだに有害になる……といったことから、何事もやり過ぎは害になる、という意味で使われます。

そうなんです。薬と毒は別物とは言えません。これまでにも紹介してきた通り、薬は使い方を間違えれば、からだに悪影響を及ぼす“毒”になることがあります。

また、使う必要のない人が使った場合も“毒”に。その例として、がんの痛みを和らげるために使われる「モルヒネ」という薬があります。強い痛みを抱えたがん患者にとって、モルヒネは有効な鎮痛薬です。ところが健康な人が使うと、モルヒネは快楽物質として働き、心地よい興奮状態を作り出します。繰り返し使ううちに、モルヒネなしではいられない「薬物依存」の状態に。からだも心もおかしくなり、最悪死に至ることもあります。

「この薬はよく効くから」と、たいして症状が出ていないうちから何度も同じ薬を使ってしまうのも、一種の薬物依存です。最初のうちはよく効く薬だったとしても、何度も使ううちに効果が出にくくなり、薬としての側面よりも、依存症という“毒”としての側面が強くなってしまいます。睡眠薬や頭痛薬といった身近な薬でも、薬物依存は起き得ます。

薬は正しく使ってこそ薬。 “毒”に変わらないよう、十分に注意して使いましょう。

「薬」が「毒」に変わるとき

監修:加藤哲太(東京薬科大学薬学部教授)