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薬が作用する仕組み Vol.2 「発熱」と「痛み」を抑える

スコッピィ君:みんなも経験あるよね!

風邪をひいて熱が出た……。だれもが経験したことあるはずです。でも、どうして熱が出るのでしょうか。それは、くすりのいろは 薬ってなんだろう Vol.1 「治ろう」とするからだの力を助けてくれる、強い味方に出てきた、病気やケガを自分で治す力、「自然治癒力(しぜんちゆりょく)」と深い関係があります。

治る過程で必要な「発熱」

熱が出るのは、風邪を治すために“必要だから”なのです。

風邪は、原因となるウイルスが、私たちの体内で増え、喉の痛みや鼻水、発熱、頭痛といったさまざまな症状を引き起こす病気です。症状が重くなる前に何とかしなくては!ということで、高温に弱いウイルスが増えないように体温を上げているのです。

治る過程で必要な「発熱」

さゆちゃん:具合が悪いと安静にしていたくなるのには、理由があったのね。 スコッピィ君:YSE!病気やケガを治すために必要なんだね。

痛みは、からだが発する”警報”

頭が痛い、虫歯が痛い、切り傷や打撲、やけどの痛み……。こうした痛みを感じるのも、実は病気やケガを治すために必要な段階といえます。

だって、痛みをまったく感じなかったら、どうなるでしょうか?病気やケガに気づくことができず、健康なときと同じように動き回ったり、傷口の手当てをしなかったりしたら、病気やケガがどんどんひどくなってしまいますから。

さゆちゃん:具合が悪いと安静にしていたくなるのには、理由があったのね。 スコッピィ君:YSE!病気やケガを治すために必要なんだね。

発熱や痛みのもとを断つ薬

では発熱や痛みは我慢すべきかというと、そうでもありません。発熱や痛みが長時間続けば、体力を消耗して病気やケガが治りにくくなります。そこで薬の出番です。

熱が出てからだのあちこちが痛むようなときにのむ薬は、「解熱(げねつ)鎮痛薬」と呼びます。「熱を下げ、痛みを鎮める」というのがセットになっているのはなぜか? 実は、熱を上げるのも、多くの痛みを引き起こしているのも、もともとからだの中にある「プロスタグランジン」という物質なのです。

くすりのいろは 薬が作用する仕組み Vol.1 体内にある物質に“似せて”働くにおいて、薬はからだの中で起きている作用を、強めたり弱めたりすることで効果を発揮するという作用の仕方を勉強しましたが、現在最も広く使われている解熱鎮痛薬は、からだの中でプロスタグランジンが作られるのを抑えて効果を発揮します。アラキドン酸という物質からプロスタグランジンを作りだす酵素の働きを抑えるのです。このタイプの薬の成分で、最も歴史が長いのが「アスピリン」です(下コラム参照)。

解熱鎮痛剤の副作用

ちなみに、プロスタグランジンには胃粘膜を保護する作用もあります。なので、プロスタグランジンが作られるのをブロックするタイプの解熱鎮痛薬をのむと、胃を荒らす原因に。病院で解熱鎮痛薬と一緒に胃薬が処方されることがあるのも、納得ですね。

解熱鎮痛剤のはたらき

小児用の風邪薬のこと

発熱や痛みのもとになるプロスタグランジンを抑えるタイプの薬は、子どもがのむと重い副作用を引き起こすことがあるため、原則的に禁止されています。子ども用の風邪薬には、脳の中にある痛みを感じる部分に働きかけ、痛みを感じにくくする「アセトアミノフェン」という成分が使われています。
アセトアミノフェンがどのように作用するのかについては、まだ解明されていない部分も多いのですが、「痛い」と感じるレベルを上げていると考えられています。

小児用の風邪薬のこと

解熱鎮痛剤のはたらき

解説

痛みには種類がある

痛みは、大きく2種類に分けられるよ。

切り傷や打撲、骨折、やけどのような、からだの組織が傷ついたために起こる痛みを「侵害受容性疼痛」と呼ぶんだ。痛みを引き起こす「プロスタグランジン」が原因の、痛みの大多数がこれ。けがをしたときや熱が出ているときなどに、一次的な症状として現れることが多いよ。

もう1種類、さまざまな情報を伝達する「神経」が傷ついて起こる痛みを「神経因性疼痛」と呼ぶよ。おじいさんやおばあさんが「神経痛で腰が痛くて……」といっていたら、このタイプの痛みだね。なかなかよくならない、慢性的な痛みになっちゃうことが多いみたい。

侵害受容性疼痛をちゃんと治さないでいたら、神経まで傷ついてしまい、神経因性疼痛が出るってこともあるから、一次的な症状のうちに、ちゃんと治さないと!

侵害受容性疼痛 神経因性疼痛

コラム

アスピリンとヤナギの木

病気のときも、けがをしたときにも感じる「痛み」。「この痛みさえなくなれば、いつも通りに過ごせるはずなのに……」と思うこと、少なくないのでは? 痛みを抑える薬というのは、太古から切望されていた、いわば薬の原点といえるでしょう。

紀元前の古代ギリシャ時代の医師で、医学の始祖とされるヒポクラテスは、ヤナギの木の樹皮や葉の抽出物を、痛みの治療に使っていたようです。中国では、ヤナギの小枝をかんで歯の痛みを抑えていたとか。洋の東西を問わず、先人たちはヤナギに痛みを抑える作用があることを、経験的に知っていたようです。

しかし、この鎮痛効果のある成分がヤナギから抽出・分離されたのは19世紀初頭のこと。ヤナギの木の学名「サリックス・アルバ(salix alba)」にちなんで「サリシン(salicin)」と名付けられました。これをもとにして、解熱鎮痛薬の成分、アスピリンが誕生しました。

アスピリンとヤナギの木
アスピリンとヤナギの木

監修:加藤哲太(東京薬科大学薬学部教授)