ニュースリリース

高血圧症に潜む「隠れ腎障害」の実態調査結果について

<全国約9,000人の大規模調査「AVA-E Study」より>

大日本住友製薬株式会社(本社:大阪市、社長:多田 正世)は、この度、高血圧症に潜む「隠れ腎障害」の実態を把握するため、腎障害の早期診断の指標となるアルブミン尿について、高血圧患者約9,000人を対象とした国内初の全国横断的な大規模調査「AVA-E Study(Albuminuria Validation Analysis - Epidemiological Study)」を実施しました。その結果、高血圧患者の約4割で、尿中アルブミンが異常域を呈していることが明らかとなりました。

尿中アルブミン測定は、慢性腎臓病(CKD)および心血管疾患(CVD)発症の予知因子として有用であることは多くの疫学研究で証明されていますが、これまで、日本の高血圧患者における尿中アルブミンの実態は不明な点が多くありました。今回のAVA-E Studyの結果により、日本人高血圧患者のアルブミン尿の実態が明らかとなり、同時に要因解析を行うことでアルブミン尿を呈するリスクの高い患者背景も明らかになりました。

<AVA-E Study調査結果の要旨>

  • 高血圧患者(国内推定患者数は約4,000万人)の約4割に尿中アルブミン異常域の可能性
    AVA-E Study の患者背景は日本の高血圧患者の実態をほぼ反映していると考えられました。尿中アルブミンは、正常域の症例が57.1%であり、異常域35%、異常域(高度)7.9%をあわせたアルブミン尿陽性症例は42.9%でした。
  • 尿蛋白定性検査で陰性でも、約3割が尿中アルブミン異常域の可能性
    尿蛋白定性検査において、尿蛋白陰性例においても、30%が尿中アルブミン異常域あるいは異常域(高度)であり、尿蛋白擬陽性例では63%が異常域あるいは異常域(高度)でした。
  • 高血圧患者において、血圧高値、糖尿病、喫煙などがアルブミン尿を呈するリスクを増加
    尿中アルブミンが異常域あるいは異常域(高度)を示す危険因子を多変量解析で求めたところ、年齢、血圧、喫煙、糖尿病、eGFR(推定糸球体濾過量)がリスク上昇に働き、レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬投与がリスク減少に働く有意な因子となりました。

当社は、RA系阻害薬の一つであるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を販売しており、高血圧症の情報提供活動に注力しています。今回のAVA-E Studyによるアルブミン尿の実態調査結果を基に、患者さんの立場にたち、多くの患者さんがよりよい治療を受けられるよう、引き続き医療関係者への情報提供活動に努めます。また、ホームページ上で、患者さんやご家族の方に向けた情報サイト「高血圧と合併症」を展開し、情報提供を行っており、高血圧症に潜む'隠れ腎障害'の早期発見・早期治療の重要性を一人でも多くの方に知っていただくため啓発活動にもさらに尽力していきます。

本調査結果は、監修医師である福島県立医科大学 腎臓高血圧・糖尿病内分泌代謝内科学主任教授渡辺 毅 先生より、第33回日本高血圧学会総会(2010年10月15~17日)にて発表され注目を集めました。

以上

(ご参考)

AVA-E Studyの概要

【背景・目的】
尿中アルブミン測定は、CKDおよびCVD発症の予知因子として有用であることは多くの疫学研究で証明されています。しかし、わが国における高血圧患者での尿中アルブミン調査は、いずれも限られた集団を対象にしていることや調査症例数が限られていることから、必ずしも日本人高血圧患者全体の実態を示すとはいえませんでした。本研究は、外来患者を対象とした全国横断的調査により、日本の高血圧患者のアルブミン尿の実態把握と要因解析を行うことを目的としました。

【方法】
2009年9月から2010年3月まで約6か月間、尿中アルブミン/クレアチニン比定性検査を実施した高血圧症8,963症例の調査データを全国639名の協力医師から、インターネットにより回収しました。調査項目は、「性別」、「年齢」、「身長・体重」、「CKDの診断状況」、「危険因子・合併症・既往症」、「外来血圧値」、「尿蛋白検査」、「尿中アルブミン/クレアチニン比定性検査」、「降圧薬の処方状況」を必須項目として、「腹囲」、「eGFR」および「血清クレアチニン値」を任意項目としました。「外来血圧値」は、明らかな誤入力(外れ値)を認めた7症例のデータを除く8.956症例、「eGFR」は算出可能な7,350症例を解析対象としました。

【結果】
対象患者全体の背景は、男性50.7%、平均年齢67.4 歳、平均身長158.1cm、平均体重61.8kg、平均BMI 24.6kg/m2、収縮期血圧/ 拡張期血圧は平均138.3/78.7mmHg でした。また、日本人の代表的なサンプリング調査である国民健康・栄養調査(平成18 年)における高血圧患者の年齢分布、厚生労働省の患者調査(平成17 年)における高血圧患者の地域分布とほぼ同様であり、AVA-E Study の患者背景は日本の高血圧患者の実態をほぼ反映していると考えられました。 尿中アルブミンは、正常域が57.1%であり、異常域35%、異常域(高度)7.9%をあわせたアルブミン尿陽性症例は42.9%でした。 尿蛋白定性検査では、(-)68.2%、(±)13.8%、(+)8.0%、(++)3.5%、(+++)1.3%、未実施5.1%でしたが、尿蛋白(-)例においても、30%が尿中アルブミン異常域あるいは異常域(高度)であり、尿蛋白(±)例では63%が異常域あるいは異常域(高度)でした。 尿中アルブミンが異常域あるいは異常域(高度)を示す危険因子を多変量解析で求めたところ、年齢(+1歳;オッズ比:1.016)、血圧(正常血圧のリスクを1とした場合;正常高値:1.331、I 度高血圧:1.479、II 度およびIII 度高血圧:1.736)、喫煙(1.294)、糖尿病(1.559)、eGFR(eGFR 60mL/ 分/1.73m2 以上のリスクを1とした場合;45?60mL/ 分/1.73m2:1.490,30?45mL/ 分/1.73m2: 3.253,30mL/ 分/1.73m2 未満:5.121)がリスク上昇に働き、RA 系阻害薬投与(0.847)がリスク減少に働く有意な因子となりました。